「セクハラ報道と検証を考える会」設立の趣意

設立の趣旨

2017年秋からの#MeToo運動の世界的広がりにともない、各国の新聞やテレビでのセクシャルハラスメントおよび性暴力に関する報道が増加しました。

各メディアはこうしたデリケートな問題を報道する際、ジャーナリズム倫理や人権尊重に基づき、細心の注意を払って被害者救済を最優先に伝えるよう努めています。

例えば、ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラを最初に報じたニューヨークタイムズは、性被害を報じる際に当事者以外に2人の証言者から裏づけをとると編集者は述べています。

ローリングストーン誌は、被害者と名乗り出た女性の話を鵜呑みにして事実確認をしないままレイプ事件と報じ、後に「取材と編集、編集上の監督、事実確認に問題がある」と判断されて記事を撤回しました。

こうした誤報の反省から、事実確認を一層重視するようになりました。

また、イギリスやアメリカでは、取材の心得、被害者インタビューの際の注意点と報道後のフォロー、使用する言葉など、性暴力報道に関する厳しいルールを定めています。

イギリスBBC電子版は、悲惨な性暴力関係記事に、「警告:この記事は読者が悲しい気持ちになる可能性のある内容を含みます(Warning: This story contains content that readers may find distressing)」と注意書きを添えて報じています。

一方、日本では性暴力被害がニュース報道される機会は限られ、逆に、週刊誌でセンセーショナルに報じられるケースが少なくありません。そこには、言葉や写真などの使用規制はなく、被害当事者はもちろん、多くの他の被害者への配慮に欠ける報道もみられます。

性暴力報道に関し、日本に特例が認められるわけがなく、被害者を救済する立場で彼女/彼らの声を伝えていく必要があると考えます。

2019年12月27日、「デイズジャパン検証委員会『報告書』」(以下、「検証報告書」)が公開されました。この検証報告書では、広河隆一氏(以下、「広河氏」)から被害を受けたとの複数の証言に対し、全面的にセクシャルハラスメント及びパワーハラスメントと認定しています。

たしかに、週刊誌報道後に広河氏が発表した文面を読むと、フォトジャーナリストでありながら、深刻な社会問題であるセクシャルハラスメント及びパワーハラスメントに関する知識や意識が低かったと言わざるを得ず、許せるものではありません。

今回の検証では、週刊誌報道の事実確認も厳密になされるものと期待していたのですが、報道が事実であることを前提にした内容となっているのではないかという懸念も生じています。報道記事に基づくセクシャルハラスメント及びパワーハラスメント認定にいたる過程などを含め、この検証報告書の疑問を検証すべきだと感じます。

検証報告書を読んで、日本における性被害をなくし、セクシャルハラスメント報道のリテラシーを考えていきたいという共通の問題意識をもった知人が集まり、この趣旨のもと、検証報告書を検証するために、「セクハラ報道と検証を考える会」を立ち上げました。

今後、同会の検証内容をふまえ、セクハラ報道およびリテラシーのあり方等を考える記事をこのサイトで公開していきます。

2020年1月10日

「セクハラ報道と検証を考える会」世話人代表 永谷生希


 




 

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