性犯罪サバイバーへの支援(Contact with the media, Support for survivors of sexual offences):IPSO

ガイダンス

 [ IPSO(independent press standards organisation)の許可を得て、当団体が策定した性暴力報道ガイダンスの日本語訳を掲載します ]

IPSO(independent press standards organisation)は、イギリスの新聞および雑誌業界の独立監視組織です。IPSOは、新聞や雑誌に自らの行為に責任を負うよう問い、個人の権利を保護し、ジャーナリズムの高水準を保ち、報道・表現の自由の維持を支援します。

 メディアとの接触 性犯罪サバイバーへの支援:IPSO
Contact with the media, Support for survivors of sexual offences

目次
私たちができること、このガイダンスについて
性犯罪サバイバーのための匿名
匿名の放棄
性犯罪の訴訟報道
自分の経験を話す
報道に不満な場合は何をするか?

私たちができること、このガイダンスについて

IPSOは、イギリスの大半の新聞および雑誌の独立監視組織です。
私たちは、個人の権利を保護し、ジャーナリズムの高水準を保ち、報道・表現の自由の維持の支援をしています。

Website: www.ipso.co.uk
Email: inquiries@ipso.co.uk

出版実施規定に関するアドバイスが必要だったり、もしくは、報道やジャーナリストの態度に不安があったりする場合は、0300 123 2220に連絡をください。営業時間外または週末の緊急時には、07799 903929の緊急24時間アドバイス・サービスを使って連絡することもできます。

私たちスタッフはまた、緊急のハラスメント問題の対処にも応えます。スタッフは、あなたの悩みについて話をし、実用的なアドバイスと助言を提供します。場合によっては、私たちは、出版業界に対して具体的な要求(たとえば、あなたへの電話を止めさせるとか)や、出版規定に違反する可能性がある資料を今後報道することへの懸念を伝えることができるように通告します。

告発したいのであれば、文書かウェブサイト(www.ipso.co.uk/make-a-complaint)、もしくは、メール(inquiries@ipso.co.uk)で行う必要があります。

これは、性犯罪サバイバーの方たち向けの情報です。報道機関が性犯罪を報道するときに従うべき規定について取り上げており、報道機関に話したいか話したくないかを決めるのに役立てることができます。

あなたがサバイバーの場合、次のような状況にあるとき、一回または何回か、ジャーナリストと接触することになるかもしれません。

  • あなたが当事者である裁判をジャーナリストが取材しているとき
  • ジャーナリストがあなたにインタビューを申し出てきたとき
  • あなたが関わっている運動の一環として、あなたがジャーナリストに話したいとき

性犯罪は、その性質により、極めて慎重を期するものです。自分の経験をメディアに話し、意識を高め、他のサバイバーを支援したいと思うかもしれません。もしくは、メディアに話さないことを選ぶかもしれません。この情報は、どちらの状況においても、あなたに役立ちます。

私たちの出版実施規定では、性犯罪の"被害者"と呼んでいますが、その理由は、この用語が法的手続きで主に使われているからです。私たちは、これらの問題を書き表すときに使用される言葉が重要だと認識し、"サバイバー"または"あなた"という言葉を用いることを選びました。

重要ポイント

性犯罪サバイバーは、これらの犯罪の報道に関し、永久的に匿名を与えられます(別の言い方をすれば、あなたの身元は公開されません)。

  • あなたはジャーナリストに、自分の経験についてインタビューされたいかどうか尋ねられるかもしれません。あなたは、メディアに話したいか話したくないか、話すとしたら、その時期を選ぶことができます。
  • あなたの事件が裁判になったら、ジャーナリストは報道を認められ、あなたの身元を特定する可能性のある情報以外はすべて、裁判所で公開される証拠として述べられたことや提供されることを報道できます。
  • ジャーナリストは、報道する情報を選ぶことができ、述べられたことすべてを報道する必要はありませんが、報じる情報は正確でなければなりません。

性犯罪サバイバーのための匿名

私たちは、匿名にすることが、性犯罪サバイバーにとって極めて重要であることを知っています。法律では、これらの犯罪およびその結果として生じるあらゆる起訴において、メディア報道ではあなたに永久的に匿名が与えられます。これは、ほとんどの状況で、あなたがサバイバーとして身元特定されないことを意味します。スコットランドの法律は少し異なります。

サバイバーは、自分たちか他の誰かが性犯罪の告発をした瞬間から、匿名にする権利を持ちます。サバイバーの名前を公表した新聞や雑誌の編集者は、刑事告発されます。

出版規定は、法律に厳密に従い、ジャーナリストに、身元特定または性暴力サバイバーの身元を特定する可能性のある情報の報道を禁止しています。あなたの身元を特定する可能性のある情報の種類には、名前や年齢といった個人に関する詳細だけでなく、あなたと加害者の関係(もし何かあれば)といった告発された犯罪に関する情報も含まれます。

極めて珍しい状況ではありますが、あなたが成人のサバイバーの場合、ジャーナリストはあなたの身元を特定することができ、たとえば、警察の時間を浪費させたという罪(wasting police time)での告訴といった違う裁判訴訟をジャーナリストが報道している場合、身元特定情報を報道する非常に正当な理由があり、法律上それを自由に報道できます。

あなたが16歳未満で、性犯罪に関係する事件のサバイバーまたは目撃者であれば、ジャーナリストは法律上、自由に身元を特定することは可能ですが、あなたの身元を特定することはできません。

匿名の放棄

あなたが自分の経験をジャーナリストに話したいのであれば、匿名でそうすることを選ぶことができ、もしくは、匿名の権利の放棄を選ぶこともできます(別の言い方をすれば、あなたが性犯罪のサバイバーであると公表すること)。

成人のサバイバーだけが、匿名の権利の放棄を選ぶことができ、ジャーナリストに話すからといって匿名を放棄する必要はありません。

匿名の放棄の選択は、あなたが性犯罪サバイバーであると大衆が知ることを意味するため、重大な決断です。しかし、あなたの経験を公表するという選択は、非常に説得力があり、似たような経験を持つ他の人々に、自分に何が起きたかについて話す気持ちにさせることができます。

あなたは、慎重に、匿名の権利を放棄したいかしたくないかを考えるべきです。その決心をする前に、弁護士、または、サバイバーの支援団体からアドバイスを受けてもいいでしょう。

匿名を放棄する決意をしたら、あなたをインタビューしているジャーナリストに、文書でそれを示す必要があります。

性犯罪の訴訟報道

自分の事件が裁判になったら何が起こり得るか?

ジャーナリストは、裁判の傍聴に来る可能性があります。そうなると、ジャーナリストは次のことができます。

  • 公判の一日または数日傍聴できます。
  • インタビューをしてほしいか、あなたに申し出ることができます、そして、
  • あなたの事件について記事(複数の記事)を報道できます。

ほぼ全面的に、ジャーナリストは、あなたの身元を特定したり、サバイバーとしてあなたの身元特定につながりそうなものを報じたりすることはできません。

ジャーナリストは裁判所で何をするか?

記者は、自分の報道の正確を期するために、裁判を記録してノートをとります。

ジャーナリストが裁判所に現れるというのは、サバイバーの身元特定を含む、一般人が得られることのない広範な情報を彼らが入手することを意味します。彼らは、裁判所に説明を求めることができ、起きたことを正確に報じるために確かめようとして、この情報を手に入れます。

ジャーナリストは、裁判に関してあなたにコメントを求めるかもしれません。ジャーナリストは、適切に、あなたの匿名の権利を守る方法で、接触しなければなりません。あなたは、そのジャーナリストに話したいかそうではいか、決めることができます。

ジャーナリストは訴訟について何を報道できるのか?

一般的に、新聞は次の報道を認めています。

  • 目撃者または加害者の証言を含む、公開法廷で述べられたり、証拠として使われたもの。
  • 訴訟事件での加害者または目撃者の名前、年齢、住所、そして、
  • 訴訟事件にかかわる人の写真、写真家が撮影した写真や、ソーシャル・メディアのプロフィールで公開されている写真を含みます。

ジャーナリストはここではまだ、あなたの身元を特定する、もしくは身元特定につながりそうなものを報道しないことを忘れてはいけないことになっています。

重要だと思っていることが記事に含まれていないという理由で、もしくは、ジャーナリストが犯罪に関していくつかの動揺させるような情報を報道したという理由で、人は怒ります。

ジャーナリストは、記事に何を含ませ、何を含ませないかを選ぶことができ、詳細を報道することでサバイバーの身元を特定する可能性があることを懸念して、詳細を省くかもしれません。ジャーナリストは、その情報が犯罪にとって重大であるという理由で、動揺させる情報の報道を決めるかもしれません。

新聞はまた、以前に一部報道された事件の結果をつねに報じるとは限りません。事件の一部が報道されても、結果が報道されていなければ、新聞に問い合わせるべきです。これをした後、新聞は事件の結果を添えた報道をすべきです。

自分の裁判についての記事はどこで報道されるか?

記事は、公判中のどこかの時点で報道される可能性があり、裁判全体を取り上げないかもしれません。報道する側は、原告と被告の主張を違う日に傍聴した際は特に、両者の主張を常に記事に書くとは限りません。しかし、単独または連載の記事は、重大な誤解を招くようなものであってはなりません。

法廷にいる記者がたったひとりでも、記事は多くのさまざまなメディアで掲載されるかもしれません。なぜなら、記者は、エージェンシーに所属しており、記事を複数の新聞に提供する可能性があるからです。別の場合では、他の出版社が、オリジナルの記事を見て、この事件を報道したいと考えることもあります。

自分の経験を話す

訴訟手続きが終了した後、またはあなたができると思った別の時期に、自分の経験について話したくなるかもしれません。あなたは、メディアに話したいか話したくないか、話すなら、いつ話すか、決めることができます。

ジャーナリストは、自分の報道において正確を期すために、記事を書くうえで誰かに話してほしいと考えるのが普通です。

インタビューの前に考えるべきこと

インタビューを受ける前に、次のことについて考えてみるといいでしょう。

  • インタビューをどこでやりたいですか? 自分が安心できるプライベートな場所を選ぶといいでしょう。
  • インタビューの最中、そして終了後の両方の時点において、あなたが必要なサポートがどのようなものか確かめるといいでしょう。
  • インタビューで匿名を選んだ際、ジャーナリストがどの詳細を報道したらあなたは満足でしょうか。
  • インタビューであなた自身も録音したいでしょうか。

掲載される前に、自分の話したことがどのように書き表されているかを知りたいのであれば、インタビューの前にジャーナリストにこれに合意するか尋ねるべきです。しかし、ジャーナリストはこれをする必要がなく、可能性がないかもしれないことを知っておくべきです。

インタビューでは何が起こるか?

ジャーナリストは、あなたの経験について質問するでしょう。あなたは、不快感を抱いたらいつでもインタビューを止めたり、中断を求めたりする権利を持っています。

自分の経験を話すことは、力づけることになりますが、怒りもまた感じるかもしれません。インタビューに友人や家族を同席してもらったり、インタビューの後にサポート・サービスに連絡したりしてもいいでしょう。

インタビューについて書かれたすべての記事で匿名にしたいか明確にすべきです。匿名にする場合、どの詳細を含ませることができるかジャーナリストと事前に合意しておくようにすれば、あなたの身元が特定される可能性のあるものは一切報道されないと確信できます。

ジャーナリストは、あなたが話すことをノートにとったり、録音したりするかもしれません。そうするのは、あなたが述べたことを正確に報道するよう確認するためです。あなたもまた、インタビューを録音したり、自分自身でノートを取ったりしてもいいでしょう。

自分が提供した情報はどうなるか?

ジャーナリストは、あなたが記事に提供した情報を使うかどうか決めます。書いた記事が掲載されるとき、あなたに言うことはできない可能性があります。

掲載される前に記事で自分の話したことがどう書き表されているか知りたいのであれば、インタビューの前にこれに同意するかジャーナリストに聞くべきです。

報道する前に同意を得ていれば、あなたが提供したすべてのコメントも含め、報道されるのと近い記事をジャーナリストがあなたに見せることができるときもあります。これは、〝原稿承認(getting copy approval)〟と呼びます。ジャーナリストは、原稿承認をする必要がなく、それはかなり珍しいことです。あなたが話した通りに記事が書き表される可能性のほうが高いといえます。原稿承諾を求めるのであれば、インタビューの前にこのことをジャーナリストに言うべきです。

記事が報道されたとき、内容のある特別な部分、大抵は最も衝撃的または劇的な部分を強調する見出しがつけられます。見出しは大抵、あなたが話したジャーナリストが書くのではなく、他の人が書き、新聞や雑誌では、記事が報道される前にそれが何になるかをあなたに言うことは考えられません。

新聞の紙面に記事が掲載されても、新聞の電子版があるときは特に、記事はネット上にも掲載される可能性があります。電子版は、紙版とは少し異なります。

記事が報道されたら、他の新聞や雑誌もまた、あなたの経験について書く可能性があります。それらの読者層に適した方法で記事を書くことを選ぶかもしれません。

報道に不満な場合は何をするか?

あなたの話がどのように報道されるか、もしくはジャーナリストがどういう態度を取るか心配であれば、私たちに連絡をください。

私たちは、会員となっている新聞や雑誌(そしてそれらのウェブサイト)への苦情であれば、検討することができます。

どう苦情を言ったらいいのかアドバイスがほしいとき、または、出版社が私たちの会員であるかどうか知りたいときは、私たちのウェブサイトをチェックするか、アドバイスを求めて電話をください。

 (翻訳:セクハラ報道と検証を考える会)

IPSOのサバイバー向けガイドラインは、IPSOのウェブサイトの「市民へのアドバイス(Advice for the public)」ページからダウンロードできます。



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