デイズジャパン最終検証報告書の検証(11) 間接証言(伝聞)と裏付けなしの事実認定、メディアを使って正当性を主張

報告書の検証

※注意:今回の記事は、セクハラの描写等を含むため、不快な気持ちになる可能性があります。

前回の「重視したのは「当事者の納得」、裏取りの痕跡なし:デイズジャパン最終検証報告書の検証(10)」では、ヒアリングの裏取りをしていない実態を指摘しました。

さて、今回も、ヒアリングと裏づけが不明確な2件のケースを検証します。

「(2)セクシャルハラスメントに関する証言」(20頁1行目から24頁17行目まで)のうち、当事者ではない証言です。

ヒアリング対象者が不明

ひとつは、「ウ 裸の写真の撮影」で、「写真データを整理していたら、……顔見知りの女性(学生)の裸の写真を複数見つけてしまった」(22頁13行目~28行目)というものです。

まずは、検証報告書の内容をみていきましょう。

この証言によると、「撮影された女性にとって不本意なものだったらと思う」と判断し、「誰に相談すればいいかわからないまましばらく一人で悩んだ」後、「親しかったデイズジャパン社の女性社員にのみ打ち明け、写真を見せ」、「当時の取締役会に出席していた中で、一番広河氏にべったりしていない印象だった外部の女性に」伝えたとあります。

そして、デイズジャパン社の対応は、この証言者を退職に追い込み、「取締役会に出席していた別の女性から……、今回見たことを外部に言わないよう」強く念を押されたということです。退職の理由は「経営上の理由で事務所を縮小する」ものでしたが、「辞めさせるための口実を作っただけだった可能性があると思う」となっています。

「辞めさせるための口実を作っただけだった可能性があると思う」という結論部分は、証言者の推測で書かれています。証言者が推測を交えて証言することは珍しくなく、記憶違いの場合も当然あります。

ですから、その証言が正しいのかどうかを、別の証言や資料で裏付けを取る必要があります。これは調査や取材の基本的な動作です。

しかも、検証委員会が、写真を撮られた当事者、打ち明けられたデイズジャパン社の女性社員、取締役会に出席していた女性、デイズジャパン社、そして広河氏にヒアリングをしたのかどうかは、ここには記されていません。

検証報告書の特徴は、「思われる」という主観的表現で、見解が割れる点や推測の部分をどんどん事実として認定していく手法です。再度書きますが、こうした手法は、研究やジャーナリズムの領域では通用しません。

当事者へのヒアリングの有無が不明

もうひとつは、「性交には至らない性的身体的接触」(22頁1行目)です。

これは、「広河氏が海外のイベントに同行した女性ボランティアにキスしようとて、被害者本人がデイズジャパン社の女性社員を通じて広河氏に抗議した」(22頁2行目~4行目)というものです。

検証委員会はどのように事実認定をしているのでしょうか。

「(2)セクシャルハラスメントに関する証言」の項には、4行のみの記述ですが、「第10 デイズジャパン社のコンプライアンス」の「3 ハラスメントへの抗議とデイズジャパンの対応」、「(5)ボランティア女性からの抗議」(93頁34行目~41行目)に同じ証言が書かれています。

(a)デイズジャパン社女性社員A(以下、女性社員A)の証言によると、当事者が同行した他のボランティア女性(以下、ボランティアB)に相談し、ボランティアBから自分に連絡があったと書かれています。

(b)女性社員Aは、「被害女性の言い分を広河に伝え、……『謝罪すべきですよ』ということを伝え」(93頁37行目)、「広河氏は被害者が負担していた渡航費に相当する程度の金員をポケットマネーから支払った」(22頁2行目~4行目)とあります。

(c)また、女性社員Aは、「アウレオ社のDに本件について話した」が、「他の役員に直接伝えることはなかった」(93頁40行)、「広河さんはなんでも守屋さんに相談していたから、この件も広河さんから守屋さんに伝わっているのではないかと思っていた」(94頁20行目)と証言しています。

まず(a)と(b)について。このケースは、証言者の女性社員Aの他、広河氏、そして、デイズジャパン社監査役のアウレオ社の守屋氏と、その部下でデイズジャパン社に出向していたDの証言が記載されています。しかし、検証委員会が当事者にヒアリングを行ったかどうかは、書かれていません。ボランティアBの証言も見当たりません。間接証言(伝聞)のみです。

次に(c)はどうでしょう。

検証委員会は、他の社員2人から「Dにこの件を伝えたと聞いた」との証言(94頁10行目)を得ています。検証委員会は女性社員AがDに伝えた裏づけをとっています。ここで注意すべきは、女性社員AがDに伝えたことを裏づけているのであって、セクハラがあったかどうかを、その2人の社員が証明したわけではないという点です。

にもかかわらず、検証員会はセクハラがあったと認定しています。事実の適示ではなく、主観的表現を使って、読み手に事実であるかのように思わせているのです。

以下、具体的にみてみましょう。

検証委員会は広河氏のヒアリングの態度について、「セクシャルハラスメント事態については曖昧な言い方をしたり」、「『同じ部屋にいただけだ』と強弁した」としています(94頁1行目~8行目)。さらに、検証委員会が、「何も悪いことをしていないならなぜお金を払う必要があったのか」などと伝えた際、「広河氏は不機嫌な表情で黙りこんだ」と主観的な感想を述べています。広河氏は証言で、「むこうがセクハラととらえたならそういうことになってしまうから」との理由で、「ボランティアの女性に金銭を支払ったことは認め」(94頁4行目)たと書かれています。「金銭を支払った」のは事実です。しかし。他は「曖昧な言い方」「強弁した」「不機嫌な表情」「黙りこんだ」という主観的表現で、事実の究明を放棄しているのです。この“不機嫌な表情”については、「性的指向を持ち出してセクハラの事実認定に利用:デイズジャパン最終検証報告書の検証(3)」でも指摘しています。

では、次回、アウレオ社の守屋氏と、その部下でデイズジャパン社に出向していたDの証言をみていきましょう。



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