※注意:今回の記事は、セクハラの描写等を含むため、不快な気持ちになる可能性があります。
※性暴力に遭った方々の表記は、「サバイバー(生還者)」にします。
今回から、「デイズジャパン検証委員会『報告書』」(以下、「検証報告書」)に記載された証言を詳しくみていきましょう。
検証委員会がヒアリングをした証言は、「(2)セクシャルハラスメントに関する証言」(20頁1行目から24頁17行目まで)です。「個々の検証はなく一括して証言の信用性が高いと判断したことへの疑問: デイズジャパン最終検証報告書の検証(2)」で書いた通り、証言は15件で、内訳は、当事者9名、当事者以外(相談を受けた、セクハラらしい話を聞いたなど)6名です。
被害件数と証言数の内訳は、「性交の強要」3件はすべて当事者の証言、「性交には至らない性的身体的接触」2件のうち1件は当事者の証言、「裸の写真の撮影」4件のうち3件は当事者の証言です。「言葉によるセクハラ」は7件とありますが、証言は8名で、そのうち当事者は3名のみです。そして、環境型セクハラ1件は当事者の証言となっています。
これ以外にも、「『性的関係への合意』と認知の歪み」として51頁に8件、「性交の強制」の証言が、51頁15行目~16行目、51頁19行目~21行目に「(2)セクシャルハラスメントに関する証言」と重複して書かれています。
また、「第10章 デイズジャパン社のコンプライアンス」(89頁5行目~)の項目に、「ボランティアの女性から、広河氏からセクシャルハラスメントを含むハラスメントを受けたことを聞いた。」(91頁14行目~29行目)、「デイズジャパン社女性R」(92頁5行目~12行目)など、「(1)ボランティアの男女からの抗議」(90頁22行目)、「(2)男性社員からの抗議」(91頁3行目)、「(3)女性社員からの抗議」(91頁12行目)、「(4)女性社員による、守屋氏への告発」(92頁3行目)、「(5)ボランティア女性からの抗議」(93頁32行目)、「(6)アシスタント女性からの抗議」(94頁26行目)があり、これらのいくつかの証言は重複し、抗議に対するデイズジャパン社の対応などコンプライアンスの問題などが示されています。
つまり、「(2)セクシャルハラスメントに関する証言」の15件の検証は、「(3)セクシャルハラスメントの認知」(25頁)で、「以上の証言はいずれも、……信用性があると認定した」(25頁4行目)、「報道された内容は事実であると確認した」(25頁8行目)とするだけで、ひとつずつすべての検証内容は書かれていません。
そのため、どの点を持って、信用性があると認定したのか、事実であると確認したのか、非常にわかりづらい構成になっています。
それでは、「(2)セクシャルハラスメントに関する証言」の15件を順に追ってみていきます。
「ア 性交の強要」の1番目は、週刊誌2019年2月7日号で報道されたサバイバーの証言です(20頁6行目~31行目、51頁15行目~16行目)。これについては、「性的指向を持ち出してセクハラの事実認定に利用:デイズジャパン最終検証報告書の検証(3)」をご覧ください。
2番目は、週刊誌2019年1月3・10日号で報道された、「シティホテルに呼ばれ、押し切られあっという間に性行為をされてしまった」「着衣がない状態で写真を撮られた」(20頁32行目~21頁12行目、51頁19行目~21行目)ケースです。
そして3番目も、週刊誌2019年1月3・10日号で報じられた、「ヌードの状態で写真を撮られた」「海外取材で、高熱を出してしまい薬を飲んで朦朧としている状況だったにもかかわらず……」(21頁13行目~39行目)という証言です。
これら2件のうち、1番目は、「長い期間、誰にも相談できなかった」とあり、当事者以外の証言があるのか、つまり、裏を取ったかどうか不明です。
2番目は、「当時は誰にもはっきりとは相談できなかった」「長くボランティアをやっていた女性に相談したところ『伏せておきましょう』と言われショックだった」「自分以外にも、相談したボランティア女性からそのように言われた人がいる」とありますが、「相談したボランティア女性」の証言が、この「検証報告書」に含まれているのか、わかりませんでした。
「性交の強要」の3件の証言は、いずれも信用性があると認定され、「複数の当事者から直接ヒアリングができた」(25頁6行目)、「広河氏とのメールのやりとり等の客観証拠を確認できたものもあった」(25頁7行目)との理由で、報道された内容は事実であると確認しています。これらについても、「複数の」「ものもあった」とあり、この件がそれに相当するのかは不明です。
「広河氏の説明と照らし合わせた」(25頁7行目)結果、「証言されたいずれの件も、『相手の女性の合意はなかった』と認定」(25頁23行目)しています。
ただし、上述のように、証言者と広河氏の説明以外に、裏付けをどのように行ったかは定かではありません。
次に、「イ 性交に至らない性的身体的接触」(22頁)ですが、1番目の「キスを迫られた」ケースは、当事者ではなく、相談されたボランティア女性の証言で、広河氏や外部社員のヒアリングもされているので、別の回で検証します。
もうひとつは、「イベントの下見の際に……、広河氏に『君には魅力がある』『つきあってほしい』と言われ、抱きしめたり指をなめるなどされた」ケースです。
この証言者は、「広河氏の仕事への尊敬があり、功績をつぶすようなことをしてはいけないと思い、『何もすべきではない』という結論を自分のなかで出した」「その後広河氏の女性関係の変な噂を聞き、やっぱりそうなのかと思い尊敬の念が消えて目が覚めた。」とあり、その当時は誰かに相談することはなかったと思われます。
証言の信用性を認定した理由は、前述した「以上の証言はいずれも、……信用性があると認定した」(25頁4行目)、「広河氏の説明と照らし合わせた」(25頁7行目)でまとめられ、当事者以外の証言はありません。
次回は、「言葉によるセクシャルハラスメント」の8名の証言を検証し、「裸の写真の撮影」の2件は別の回で取り上げます。