デイズジャパン最終検証報告書の検証(8)  15件の証言のうち当事者以外の証言があるのは3件のみですべてセクハラと認定

報告書の検証

※注意:今回の記事は、セクハラの描写等を含むため、不快な気持ちになる可能性があります。

※性暴力に遭った方々の表記は、「サバイバー(生還者)」にします。

前回の「個々の証言の裏付けをせずに15件まとめて信頼性が高くセクハラは事実と認定:デイズジャパン検証報告書の検証(7)」に引き続き、「デイズジャパン検証委員会『報告書』」(以下、「検証報告書」)に記載された証言を詳しくみていきましょう。

今回は、「(2)セクシャルハラスメントに関する証言」(20頁1行目から24頁17行目まで)の「エ 言葉によるセクシャルハラスメント」の証言(23頁15行目)と「オ 環境型セクシャルハラスメント」の証言(24頁14行目~16行目)です。

「エ 言葉によるセクシャルハラスメント」に記載されている証言は8名で、そのうち当事者は3名のみです。「1 広河氏によるセクシャルハラスメント」の「概況」(19頁14行目)では、「言葉によるセクハラ」は7件とありますが、証言は8名記載されています。

1番目は、当事者以外のボランティアの証言で、「大きな写真展企画のため大勢のボランティアが出入りしていた時期、複数の女性ボランティアが広河氏から性的関係に誘われていた(「一緒にシャワーを浴びないか」と言われた等)」(23頁16行目~20行目)です。

同じ内容が、「『性的関係への合意』と認知の歪み」の項目にも重複して記載されています(51頁1行目~3行目)。

さらに、「3 ハラスメントへの抗議とデイズジャパン社の対応」に、「(1)ボランティアの男女からの抗議」(90頁24行目~33行目)にボランティア男性の証言がほぼ同じ内容が書かれています。

そして、「デイズジャパン社の対応」の項目には、「証言した男性によると」(90頁34行目~91頁2行目)として、「広河氏は、ボランティアの男性及び女性から抗議を受け、諫められた」「その後も行動を改めることはなく、ボランティアらに対するセクシャルハラスメントはその後も続いた」「その後顔を合わせる機会があった際、自分を気に入らない様子が明らかだった」との記載がありますが、デイズジャパンがどのような対応をしたのかは書いていません。

2番目も、当事者以外のデイズジャパン社社員の「広河氏がボランティアの複数の女性をホテルに誘ったり、個人的に電話をかけるなどしていて、これを知った社員が広河氏を追及したところ、退職に追いやられた」(23頁21行目~22行目、24頁9行目)という証言です。

この件も、「3 ハラスメントへの抗議とデイズジャパン社の対応」の「(2)男性社員からの抗議」(91頁5行目~7行目)に重複しています。デイズジャパン社女性が、「社員の男性が、広河氏がボランティアの女性に対しセクシャルハラスメントをしていることを問題視して、広河氏に抗議した。土屋さん、守屋さん、川島さんという役員はいたが、会社の中のことを相談できるような人や、相談できる場がなかった」と証言しています。

これに対するデイズジャパンの対応は、「証言者によると」(91頁9行目~11行目)、「デイズジャパン社は、セクシャルハラスメントについて抗議した男性社員と、証言者を共に解雇した」とあります。デイズジャパン社の証言はなく、「広河氏は『そのような抗議を受けた記憶はない』と述べた」(91頁10行目~11行目)とだけあります。

次の3件、「決して露出が多い派手な服装ではなかったのに、突然「君、色っぽいね」と言われた」(23頁23行目~33行目、51頁4行目~7行目)、「『研修のために、二人で安い温泉宿に合宿に行くという案を君はどう思うか』と広河氏に聞かれ」(23頁34行目~24頁4行目、51頁25行目~27行目)、「『つきあわないか』『スタッ フとして個人的に色々知っておいたほうがいい』『ホテルに行こう』と言われた」(24頁5行目~8行目、51頁8行目~11行目)は、当事者による証言です。

これしか書いていないため、上記にある、複数の「ボランティアの女性に対しセクシャルハラスメントをしている」のひとつという推測もできますが、どのように裏付けしているのかまったくわかりません。

7件目は、当事者ではない証言で、「広河氏は、広河事務所スタッフの女性を性的に誘い、それを断られたら、退職に追い込むような態度をとっていた。退職後の給与計算で、不当なことをしようとしていた」(24頁9行目~11行目)です。

これもこの証言のみで、裏がとれているのか判明できません。

「言葉によるセクハラ」の被害件数は7件(19頁)とありますが、8件目として、「広河氏から『ヌード撮影をしたいと冗談交じりに言われた』と退職した元スタッフから聞いた」(24頁12行目~13行目)とデイズジャパン社社員の証言があります。伝聞の伝聞でしかなく、なぜこれをここに入れたのか、まったくわかりません。

最後は、「オ 環境型セクシャルハラスメント」の証言(24頁14行目~16行目)です。これは1人の証言しかなく、その認定方法に欠陥があることは、「環境型セクシャルハラスメント認定にいたる事実確認についての疑問:デイズジャパン最終検証報告書の検証(1)」で指摘しています。

以上みてきたように、15件の証言のうち、当事者以外の証言があるのはたったの3件のみにもかかわらず、検証委員会は、証言はいずれも信用性があるとして、セクハラを認知しているのです。

次回は、週刊誌報道のうち、当事者以外の証言があるケースを検証します。



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